2016年のシーズン1配信開始以来、Netflixの代名詞的存在となったドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。冷戦下の1980年代を舞台に、ポップカルチャーとジュブナイルSFファンタジーが融合した物語は、世界中のファンを魅了し続けてきました。そしてついに、長年の冒険がクライマックスを迎えるファイナルシーズン(シーズン5)が開幕!
この記事では、配信が始まったばかりの『ストレンジャー・シングス』シーズン5 Vol.1(第4話まで)を、深いネタバレと共に徹底解説し、その衝撃的な結末が持つ意味や、最終シーズン全体のテーマとメッセージを深く考察します。
🔍『ストレンジャー・シングス』シーズン5 Vol.1 ネタバレ解説の前に:これまでの物語と最大の敵ヴェクナ
『ストレンジャー・シングス』の物語は、インディアナ州の小さな町ホーキンスに現れた超能力を持つ少女イレブン(エル)と、ホーキンスと繋がった「裏側の世界(アップサイドダウン)」をめぐる闘いの歴史です。
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シーズン1: 裏側の世界から現れた怪物デモゴルゴンとの戦い、そして裏側の世界に囚われたウィルの奪還。
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シーズン2: 裏側の世界を支配するマインド・フレイヤーが登場し、エルはゲートを閉じることに成功。
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シーズン3: ソ連の関与により新たなゲートが開き、エルと仲間たちは再びマインド・フレイヤーとの死闘を繰り広げ、ゲートを閉じました。
そして、シーズン4で登場したのが、心に傷を抱える人々を狙う強大なヴィラン、ヴェクナです。エルの過去の記憶が紐解かれる中で、ヴェクナの正体がかつて施設で出会った最初の被験者ワン(001)、ことヘンリー・クリールであったことが判明します。ワンはエルによって裏側の世界に追放され、そこでマインド・フレイヤーを生み出した、全ての元凶でした。
シーズン4の終盤でエルはヴェクナを倒したかに見えましたが、裏側の世界と繋がるウィルはヴェクナの存在が消えていないことを感じ取っていました。そして、そのヴェクナの脅威が去っていないことを示唆しつつ、シーズン5 Vol.1は幕を開けます。
🚪 シーズン5 Vol.1:ホーキンスの変貌と物語の焦点
ヴェクナとの決戦で起きた地震により、ホーキンスは外部から隔離され、震源地「マックZ」には巨大なゲートが開いています。このゲートは米軍に管理されており、町全体が様変わりした中で、主要キャラクターたちの状況も大きく変化しています。
1. ウィル、ホリー、そしてロビンの役割
シーズン5 Vol.1でエル以外の中心人物となるのは、ウィル・バイヤーズと、ウィーラー家の末っ子ホリーです。
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ウィルとヴェクナの繋がり: シーズン1でウィルが最初に失踪したのはヴェクナの仕業であったことが改めて示されます。ウィルは裏側の世界から帰還した後もハイブマインド(集合精神)に接続されており、ヴェクナが標的を探すために操る「電波」を受信してビジョンを見るという、いわば「ラジオ受信機」のような役割を担います。
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ホリーの役割: シーズン1でのウィル失踪の反復として、ホリーがデモゴルゴンに襲われ、裏側の世界に連れ去られる事件が発生します。過去に裏側の世界に気づく描写もあったホリーは、物語の新たなキーパーソンとなります。
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ロビンの変化: コミックリリーフとしての役割を担いつつ、ラジオ電波の知識で裏側の世界の探索を牽引します。特に、彼女の「光属性」とも言える明るさが、ウィルやダスティンを導く大きなポイントとなります。
2. アナログな探索と「ターミネーター」オマージュ
ヴェクナの脅威が続く中、エルは軍から身を隠しホッパーと訓練に励んでいます。
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ギークな探索: シーズン5では、ラジオで暗号を伝えたり、表と裏の世界で周波数を合わせて無線連絡をしたりと、インターネットが普及する前のアナログでオタク(ギーク)な手法が探索の中心となります。
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米軍の三つ巴: 裏側の世界にも基地を建設している米軍が登場。シーズン5 Vol.1の新キャラクター、ケイ博士を演じるのは、『ターミネーター』シリーズのサラ・コナー役で知られるリンダ・ハミルトンです。ホッパーとエルは、ホリーを追って裏側の世界へ行き、エルを狙う米軍との激しい戦闘を展開します。元退役軍人であるホッパーの経験が活かされ、命懸けでエルを守る姿が描かれます。
3. ウィルのクィアネスとロビンの導き
ホリー捜索を主導するのはウィルとロビンです。
ウィルは、ロビンがヴィッキーとキスをしているのを見て、ロビンがレズビアンかバイセクシャルであることに気づいていましたが、同時にウィル自身もマイクに想いを寄せています。
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ウィルの感情: ウィルはシーズン4終盤でマイクへの想いを間接的に打ち明けており、このウィルのクィアネス(性的少数者としてのあり方)はシーズン5 Vol.1の根幹に置かれています。
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ロビンの教え: ロビンは、ウィルに自身が初恋に破れたタミー・トンプソンの話をします。そして、「怖がるのをやめれば自由になれる」「答えは自分の中にある」と語り、セクシュアルマイノリティとして自分を抑圧せずに生きることの大切さを伝えます。これは、終盤のウィルの「覚醒」へと繋がる重要なメッセージです。
4. オマージュと『5次元世界のぼうけん』
『ストレンジャー・シングス』の醍醐味である80年代ポップカルチャーのオマージュも満載です。
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小ネタ: ホッパーがエルの弱点である音響装置を「クリプトナイト」と呼んだり、ナンシーたちとの合流の際の「バットシグナル」の言及、デモゴルゴンを誘き出すトラップ作戦における「ホーム・アローン」のオマージュなどが登場します。
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『5次元世界のぼうけん』: シーズン5 Vol.1における最大の引用元は、ホリーが読んでいたマデレイン・レングル原作のSF児童文学『5次元世界のぼうけん』(原題:A Wrinkle in Time、1962年)です。この物語に登場する、子どもを異次元の世界へ連れていく人物「ミセス・ワッツイット」にちなんで、ホリーはヴェクナ/ヘンリーを「ミスター・ワッツイット」と呼びます。
この引用は、かつてマイクたちが「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の用語で裏側の世界を定義したのと同じように、「活発な女の子の冒険譚」を通して世界を再定義し、初期のボーイズクラブ的な雰囲気からインクルーシブ(包摂的)なテーマへと広げていく、制作陣の強い意図を感じさせます。
💥 シーズン5 Vol.1 ラストのネタバレ解説&考察:ウィルの覚醒
シーズン5 Vol.1の第4話は、マックZでの「大脱走」作戦と、ホッパー・エルによる米軍基地襲撃、そしてウィルの覚醒という三つの大きな展開で幕を閉じます。
1. カマゾッツからの脱出とヘンリーの記憶
裏側の世界でホリーは、昏睡状態から目覚めたマックスと出会います。マックスは、ホリーが今いる世界がヘンリーの記憶でできた牢獄だと説明します。
ホリーは、ヘンリーを巨大な悪の力「イット」に支配された「カマゾッツ」という闇の惑星の存在になぞらえ、未知の世界を理解しようとします。マックスはルーカスが流していたケイト・ブッシュの「Running Up That Hill」の音楽を頼りに、ひどい記憶の奥にある出口を見つけますが、そこでヘンリーが洞窟に怯えている姿を目撃します。マックスとホリーの生還の鍵は、ヘンリーの「恐怖の記憶」にあることが示唆されます。
2. エイト/カリの再登場
エルとホッパーは、米軍基地の最深部に到達します。ヴェクナが捕えられている可能性も示唆されていましたが、そこにいたのは、シーズン2に登場したエイト(008)ことカリでした。
カリは、エルと同じく超能力を持つ被験者で、幻覚を見せる能力があります。ワン(ヴェクナ)に殺されず生き残ったのは、エルとカリの3人だけであり、カリが音響装置で動きを封じられていることから、軍の何らかの作戦に協力させられている(または利用されている)可能性が考えられます。
3. ヴェクナの真の狙いとウィルの覚醒
第4話のラストでは、裏側の世界からヴェクナがマックZのゲートから出現。兵士たちを一掃する圧倒的な力を見せつけます。ヴェクナは、子どもたちを連れ去ろうとするマレーのトラックを襲い、そしてウィルを持ち上げます。
ヴェクナは、世界を作り直すために体も心も弱い12人の子どもを選び、彼らを「簡単に作り直せて支配しやすい完璧な器」と表現します。そして、ウィルに対して、「私の世界に属している」と告げ、裏側の世界に戻っていきます。ヴェクナはウィルを殺すのではなく、自分の側の人間と考えているようです。
しかし、デモゴルゴンがマイクを襲った瞬間、ウィルはロビンの言葉を思い出し、覚醒します。
ロビン:「怖がるのをやめるだけでよかった。自由になって空だって飛べる気がした。」
マイクがウィルを「他の人と違うから特別」と評価した言葉と、ロビンの教えがウィルの背中を押します。ウィルは念力でデモゴルゴンを次々と倒し、そのデモゴルゴンの関節がひしゃげて死ぬ姿は、ヴェクナが人間に行った殺戮とそっくり同じでした。
ウィルにヴェクナと同じ力が目覚めたことが示唆されると共に、ウィルが能力使用後に鼻血を流す姿を映し出して、Vol.1は幕を閉じます。
🌟 考察:シーズン5のテーマとファイナルシーズンへの展望
『ストレンジャー・シングス』シーズン5 Vol.1は、単なるSFホラーの要素だけでなく、「マイノリティが直面する居場所のなさ」というテーマを強く打ち出しています。
1. 「ストレンジ」であることの包摂性(インクルーシブ)
シーズン5 Vol.1では、レズビアンのロビンとゲイのウィルがメインの役割を担い、「オタク(ギーク)」であることだけでなく、「性的少数者(クィア)」であることもまた、社会から「ストレンジ(変人)」と見られる状況がテーマとなりました。
そして、ホリーが女の子向けのSF文学の言葉で世界を再定義することで、「オタク」カルチャーの定義も拡大し、「この世界が自分の居場所だと感じられない者」すべてを包摂する(インクルーシブな)物語へと進化しています。最終シーズンのテーマは、「悪意に満ちた世界で、自分が自分らしくいられるか」という普遍的な課題に帰結すると言えるでしょう。
2. ウィルとヴェクナの特異な関係
ヴェクナがウィルを殺さなかったのは、彼がヴェクナの支配する世界に属する「最初の標的」であり、「完璧な器」となりうる可能性を見ているからです。ウィルが覚醒し、ヴェクナと同じ力(または対抗できる力)を身につけたことは、最終シーズンにおけるウィルの役割を決定づけます。彼は単なる被害者ではなく、エルに次ぐ、あるいはエルと並ぶ、ヴェクナとの鍵を握る存在となります。
3. 12人の子どもの謎
ヴェクナが集めようとする「12人の子ども」という数字も謎めいています。
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施設の子どもたち: 元々ホーキンス研究所の被験者はエイティーン(18)まで確認されており、単純に考えると施設を復活させ、自分が支配者となることを目指している可能性があります。
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宗教的な意味: キリストと12人の弟子(12使徒)を想起させる数字であり、ヴェクナが「世界の再構築」という終末論的な思想に取り憑かれていることと関連があるのかもしれません。
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超能力の素質: ウィルが覚醒したように、集められている12人の子どもは、何らかの形で裏側の世界に気づいており、超能力が目覚める素質があるとヴェクナに判断された可能性があります。
シーズン5 Vol.2と最終話では、エイト/カリの能力がどのように物語に関わるのか、そしてヴェクナの真の目的と、ホッパーやジョイスの「愛」がこの闘いにどう関わってくるのかに注目が集まります。
📅 今後の展開と配信情報
『ストレンジャー・シングス』シーズン5 Vol.1は、これまでのシーズンを総括しつつ、物語のテーマを一段階深めた見事なオープニングでした。
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Vol.2(最終話まで): 2025年12月26日(木)より、そしてフィナーレが2026年1月1日(木)に配信予定です。
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アニメーション: 2026年には、シーズン2とシーズン3の間のストーリーを描くアニメーション『ストレンジャー・シングス:1985年の冒険』の配信も予定されています。
長きにわたるホーキンスの物語は、悲劇的な結末を迎えることなく、誰もが自分らしくいられる世界を取り戻せるのか。ファイナルシーズンの完全なる結末に、期待が高まります。
💡 まとめ:ウィルの覚醒が示す最終シーズンのメッセージ
| 項目 | シーズン5 Vol.1の重要ポイント | 最終シーズンのテーマとメッセージ |
| 物語の焦点 | ウィル、ホリー、ロビン、ホッパーを中心とした展開。ウィルとヴェクナの特異な繋がりが明らかに。 | 「ストレンジ(変人)」とされる人々の居場所と、自分らしく生きることの肯定。 |
| ウィルの役割 | ロビンの言葉をきっかけに、ヴェクナと同じような能力を覚醒。鼻血を流し、新たな超能力者となる。 | ヴェクナの支配する闇の世界に対し、ウィルが新たな光の力として立ち向かう。 |
| 引用作品 | 『5次元世界のぼうけん』/『リンクル・イン・タイム』を引用し、女の子の冒険譚の視点を導入。 | オタクカルチャーの定義を広げ、あらゆるマイノリティを包摂する物語への進化。 |
| ラストの結末 | ヴェクナの出現とウィルの覚醒、そしてエイト/カリの再登場。12人の子どもを狙うヴェクナの真の目的。 | 「愛」と「友情」の力が、闇の支配者ヴェクナの「恐怖」と「孤独」に打ち勝てるのか。 |
あなたも、この壮大な物語の最終章をNetflixでぜひご覧ください。
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